健一視点
「うッ、はぁはぁっ!」
「ッ」
背中と下半身にピリピリとした快感が走り、その後、ジーンとした感覚が腰の辺りに感じる。
「はぁはぁ」
(あぁ、気持ちいい)
頭が一瞬真っ白になり、快感に染まる・・・・・・しかし。
(やっぱり声を出してくれないな)
小柄な彼女が俺の下で口を結び眉根をよせ、何かに耐えている表情をする。
「・・・・・・」
下半身に手を伸ばす。
「ッ!」
彼女・・・由美がビクッと反応する。
(・・・う~ん)
接合部を触る、確かに濡れている。
(でも、いまいち濡れてないんだよなぁ)
中で動かして、痛いほどではない。
しかしこれで感じている、イっているとはとても思えない。
「どうしたの?」
首を微かにかしげながら、由美が蚊のないたような声で聞いてくる。
(・・・かわいいなぁ)
小柄な由美が小さく首をかしげる姿はリスなどの小動物を連想させ、とてもかわいい。
「別に~」
「ひゃっ」
その姿に思わず、抱きしめてしまう。
「う~ん。落ち着くなぁ」
腕の中にすっぽり入る小柄な彼女。
しかも、肌のさわり心地もなめらかで最高だ。
「だ、大丈夫?」
「あぁ、大丈夫。大丈夫~」
彼女はかわいい。こんな優しくて可愛い彼女がいるなんて、近所の人達や友達に言いふらして、笑い転げたいくらいだ。
あぁ、これは実際にしたな。
由美が真っ赤になって止めようよって何度も言ってたなぁ。
でも、彼女も苦笑い、照れ笑いの類の表情だったので(その顔もまたイイッ!!)俺も言いふらし、自慢しまくった。
あの時も今も幸せだ。
でも、心の中に微かに残る何か・・・幸せの影に普段は隠れている何かがエッチの時は「にゅ」
と出てくる。
(俺って下手?由美は感じてない?)
どうなのだろう?わからない。
彼女は口数が少ない。
しかし、意外と表情は豊かだ(よく見ないとわからないけど)。
「・・・・・・」
こうやって抱きしめても表情が微かにしか変わらない(微妙に口の端を上げている)。
「・・・・・・むにゅ~」ホッペを挟み、むにゅむにゅ。
「・・・・・・」
無反応(ちょっと困惑?)
「・・・・・・むにゅ~」耳を持ち軽く伸ばす。
「・・・・・・耳なのにむにゅって擬音はおかしくない?」
「ははっそこが疑問なんだ」
パッと手を離す。
「本当にどうしたの?何か悩み?」
つぶらな瞳もこちらをじっと見つめる、問いかけてくる。
「いや、幸せだなぁ~と思ってさ」
(ここらでそろそろ何とか打開したいなぁ)
「・・・・・・・・・そう」
由美は微笑を浮かべ、頭を胸にこすり付けてくる。
「おぃおぃ。そんなにしたら立っちゃうだろ~」
「・・・・・・・・・・・・立ったら」
「んっ?」
「立ったら・・・・・・何?」
「その・・・あの・・・・・・」
少し眉が垂れ下がり、こまったような表情。
「もう、かわいいんだから~」
なぜかオネェ系の言葉で返してしまったが、まぁ由美がかわいいからOK(どういう意味だ)!
というか、由美がかわいいから全部OK!!
「きゃっ!」
ギュっと力を入れ、抱きしめ、左右に振る。
「あぅぅ」
彼女は苦笑い、照れ笑いの類の表情を浮かべる。
昔、みんなに自慢した時のような顔・・・俺がよく無茶な行動をした時によくする表情。
本気で嫌じゃないけど、困ったような顔。
「な、何?」
「別に~」
「あぅぅ」
さらに左右に振る。ますます、困った顔・・・でも微かに口の端を上げていており、目が優しくなっているのはわかる。
(うん、何とかしよう・・・でも)
でも今はこの幸せの中に浸っていたい。
「あぅぅ・・・も、もう~」
由美の視点
「う~ん」
きわどく、派手な赤色の下着を見ながら想像する。
(・・・・・・どう考えても似合わないよね)
その赤の下着を着た自分を想像する。
(どう考えても、背伸びしたい女の子が色気を出そうと無理しているだけだよね)
「・・・・・・ふぅ」
思わずため息が出てしまう。
(ダメだなぁ、私)
またため息が出そうになるのを慌てて止める。
そして、ネガティブになりそうな思考も止める。
(うん、このままダメダメ言ってても仕方ないもんね。何とか前に進んで問題を解決していかないとね!)
私は普通にしているとネガティブな思考になっていくので、意識してポジティブに持っていかないと行動できない。
(はぁ、健一がうらやましいなぁ)
「ハァーあっと」
また自然とナチュラルにため息をついてしまった。いけないいけない。
「お客様、何かお探しでしょうか?」
「あっえっと・・・」
さっきたらやたら店の中をウロウロしていたからだろう・・・ついに店員さんに声をかけられてしまった。
「えっ、あのその」
自分でも顔が熱くなっていくのがわかる。
(あぁ、絶対に変に思われてるッ!)
考え事をしていたので、店員さんが近づいていたのがわからなかった。
「い、いえ、何でもありません」
ランジェリーショップからすぐに退散する。
真理(店員さん)の視点
「あ、お客様!」
(あぁ、行っちゃった・・・はぁ・・・・・・)
久々のヒットだったのに・・・85点はかたかったのに・・・
心の中でため息を吐く。
(・・・・・・う~ん、もっと近くで見たかったなぁ)
さっきまでいた、可愛らしい女性・・・という単語より、「女の子」という言葉が似合う子。
心の中に先ほどの子を思い浮かべる。
黒いローヒールで包まれた小さく形のよさそうな足。
膝近くまでのオーバーニーソックス。
ボトムは薄いピンク色で段々に重なったティアードスカート(これがまた儚く、人形のような雰囲気とマッチしていて、かわいい♥まるで本の世界から出てきたみたい♥♥)
さらにさらに、トップスは白のレースアップ(首の下辺りから、胸の少し上辺りまでを紐を通して編み上げた服)!!
ほっそりとした真っ白の首筋、そして整った顔立ちに薄化粧。
髪型はうなじがちょうど隠れるくらいのセミショート。
「撫でたい、触りたかったなぁ、さ・い・こ・う、あぁ♥♥♥」
「先輩、声腐った心の本音が出てしまってますよ」
「えっ、あぁ、ごめん、ごめん」
「腐った心は否定しないんですか?」
しまった心の中身が溢れて出てしまっていたようだ、反省。
(本当に可愛かったなぁ、でも)
その女の子の視線の先はSEXY系の赤の下着。
(あんなの着るのかしら?)
どうみても大人しそうなのに・・・?まさか
「露出狂?・・・それともドS?そんな、あんなベビーフェイスで命令されたらッアタッ!!」
「また、声が出てましたよ。このクソど変態さん。お客さんが逃げるので止めて下さい。てか止めろ、先輩」
痛みで現実世界に戻ってくる。まったく、いいところだったのに~~。
「あいたた、本気のチョップだったでしょ?めちゃめちゃイタかったわよ。しかも、・・・・・・・はいごめんなさい、仕事します」
彼女が本気の目で本気と書いてマジだったのですぐに謝った。
「まったく」
「そんな怒らなくても」
「何ですか?」
怒気を孕んだ声にすぐに
「すいません、何でもないです。許してください。申し訳ありませんでした」
すぐに、すぐに謝った。
「ふぅ、まったく」
(すごい冷たい目。ゾクゾクするわ~)
彼女は私が他の子を褒めたり、妄想したりするとすぐに怒る。
「・・・・・・ツンデレ?」
「あぁ?」
「すいません、何でもないです。許してください。申し訳ありませんでした」
私はすぐに謝った。
由美の視点
「ハァハァッ・・・・・・・・・はぁ~」
早足で逃げてきたので軽く呼吸が乱れる・・・そして大きな大きなため息が出てしまう。
(ダメダメだなぁ、私)
外に出て空を見る。
(空は大きい、世界は広い・・・・・・でも私は小さい。背も、心も・・・)
心の準備をしていない状態で話しかけられると、てんぱって、考えがうまく回らなくなってすぐに逃げてしまう。
「・・・・・・はぁ」
もはやため息を止める力もない。
(・・・・・・会いたいなぁ)
脳裏に健一の姿が浮かぶ。
ポジティブで行動派でいつも頑張っていて、よく喋るそして、私の恋人。
じんわり胸が温かくなる。
健一を見ていると私も頑張らなきゃっと思う。
視線を下げる。鞄に付けた熊のキーホルダーを見る。
かわいいデフォルメされた熊のキーホルダー。
ゲームセンターで何回も何回もチャレンジして取ってくれたキーホルダー。
私がなんとなく見ていて欲しいとも言ってないし、大して欲しくもなかったキーホルダー。
でも、健一が勘違いして一生懸命何度も何度も機械の角度やキーホルダーの角度を調べてとってくれたキーホルダー。
100円を何度も何度も・・・・・・明らかにどこかで買ったほうが安いと思うくらい使ってチャレンジして取ってくれたキーホルダー。
「・・・・・・うん」
自然と頑張ろうと思いが溢れ出る・・・同時に暖かいに気持ちになる大事なキーホルダー。
「よし・・・」
健一は自分から告白してきてくれた、健一から手を繋いでくれて、健一からキスしてきてくれた、健一からホテルに誘ってくれた・・・その全部、身体は震えていた。
(・・・私も二人の関係のために)
二人の関係のために、今度は私のほうから関係を進めたい。
そう決心し、私は店に戻った。
2
由美の視点
「ありがとうございました~」
店員さんの少し高い声をバックに店を出る。
「・・・・・・」
軽く会釈し、そのままお店から出た。
(ずいぶん積極的で笑顔全開の店員さんだったなぁ)
手に持った紙袋のことは考えないように、違うことを考えようと意識する。
(買うとこ誰にも見られてないよね?)
キョロキョロしながら周りを見渡す。
(よし、誰もいない)
ほっとし、早足で立ち去る。
(背の高い愛嬌のある店員さんとクールな背の低い店員さん・・・わかりやすいくらい真逆の人たちだったなぁ)
歩きながら、さっきの二人を思い出す。
真逆の二人だったけど、意外と息はピッタリだった。
(普通の下着を買うときもここに来ようかなぁ)
チラッと見た普通の下着もなかなかセンスの良さそうなものもあった。
今持ってる「物」と真逆のもの・・・見せるためのものでなく、自分のための下着。
(・・・・・・あぁ、本当に見られてないよね)
もし、見られてたら・・・そう思うと、頭が爆発しそうだ。
人の噂が噂を呼びまた、その噂を人に伝わり・・・
(うぅ、3人の他人をたどっていけば、世界中の人たちに繋がるって聞いたこともあるし・・・)
(大丈夫、大丈夫・・・・・・・・・大丈夫!大丈夫!大丈夫!)
さっき店を出るときに人がいないか確認したし、大丈夫!!そう何度も大丈夫を繰り返し、繰り返し心で唱え、歩く。
(でもなんか、みんなの視線が・・・何か見られてる気がする)
いつもちっこいので、人に見られる、
他人の視線
他人のまなざし
他人の瞳
そんなのは苦手だけど、何とか耐えられる。
でも、今日は自分のテンションを上げるために、「気合の入った思い出の服」、そして手に持っている「物」が気になり・・・何だか・・・・・・その・・・恐い。
(本当に見られてないよね?)
今、見ている人達が服をバカにしているような気がしてしまう、今、目があった人が手に持った紙袋の中身を知っているような気がする。
全部、「気がする」だけなんだけど・・・恐い・・・・・・・・・恐い、恐い、恐い。
立ち止まって、うずくまりたくなる衝動に駆られる。
顔を歪めて、思いっきり泣きたくなる。
(表情は変えないようにしないと)
もし、少しでも顔の筋肉を歪めるとそのまま泣き顔になって、泣いてしまいそうになる。
それだけは何とか防ぎたかった。
(でも、恐い・・・・・・)
恐いという感情はそれでも抑えられない。
(私に出来るのは耐えることだけ・・・)
どうして、こうなのだろう?
どうして、普通に買い物くらい出来ないのだろう?
どうして、こう自意識過剰なのだろう?
「お客様~!ち、ちょっとまっ、待って、はぁはぁっ!まっはぁはぁ!ぜぇぜぇ」
自分の世界に入ってしまっていた私に聞いたことのある声が届く。
「えっ?」
意識が外の世界に戻ってくる。
目線が一瞬合わなかったが、すぐに目の焦点が合い、認識出来た。
「えっ、あなたは・・・」
さっきの店の店員さん(背の高い人のほう)が、息をぜぇぜぇ切らしながら、目の前まで来た。
「こ、これ、忘れ物・・・というか落し物です。はぁはぁ、ふぅ~」
肩で息をし、膝に手をつき、中腰の状態で言う店員さん。
「えぇっと、何を・・・ですか?」
例の下着の店員さんで、しかも高身長・・・つい動揺してしまう。
「はぁはぁ、け、携帯電話・・・お、落とされましたよ、はぁっ」
顔を上げ、腰を上げる店員さん。
「ありがとうございます」
つい、無表情で抑揚のない声で答えてしまう。ダメな私の癖だ。
知らない人には緊張して、無意識にガード・・・防御してしまうのだろう。無表情を作ってしまう。
「いえ、いえ店を出る時に落とされたんですが、お気づきにならなかったみたいで・・・ふぅ」
額の汗を手の甲で拭きながら、そう答える店員さん。
「・・・どうも」
軽くお辞儀をする。
もっと言わないといけない。
こんなに走って追いかけてきてくれたのだ。
お金を渡すのは・・・失礼かな?
それが無理ならもっとお礼を言わないと・・・っでも、緊張して顔がうまく動いてくれない。
あぁ、どうしてこうなのだろう。
「・・・・・・」
「はぁはぁ」
嫌な空気が流れる。
私は下を向いたままで、顔も首も動かせない。
ダメだ。
私、いっつもダメだ。
ダメだ。
ダメだ。
恐い。
ダメだ。
恐い。
動けない。
でも、それでも・・・この空気から逃げてはいけない・・・・・・でも、何も言わない、言えない。
「・・・・・・はぁはぁ。頑張って下さいね」
「えっ?」
顔を上げる・・・・・・店員さんはニコニコと暖かい笑顔をしていた。
「それと、携帯を持ってきたことも気にしないでいいですよ~。そんな顔しないで、ね?逆に心苦しくなっちゃいますよ~・・・ね?」
「どうして・・・?」
顔の筋肉はまったく動かしてないのに、どうしてわかったのだろう?
「あ、驚いてますね。ふふっ、こう見えても人の気持ちを理解するのは得意なんですよ~」
店員さんはなおも続ける。
「知り合いに同じような雰囲気の人がいるんですよ。その人を理解しようとしてたら、自然とわかるようになっちゃたんですよね」
「・・・・・・そう、なんですか」
「だから携帯持ってきたくらいで、そんなに気にしないでください」
「・・・・・・違うんです」
「えっ?」
今度は店員さんのほうがクエスチョンマークになっていた。
「私、何も言えなくなるんです。せっかく、こんな風に持ってきてくれたのに、こんな無愛想にしか言えなくて・・・お姉さんもこんなに優しいのに、変に緊張してしまって・・・ダメなんです」
・・・まずい・・・・・・溢れたものが出てきて泣きそうになってしまう。
「・・・・・・とりあえず。近くの公園に行きましょうか?」
そう言い、背中に手をやり、公園のほうに誘導してくれる店員さん。
「はい、どうぞ~」
「えっあの・・・・・・」
「いいから、はい」
強引に缶コーヒーを渡す店員さん。
(思わず受けとちゃったけど・・・いいのかな?)
わざわざ落とした携帯をもってきてくれて、しかもコーヒーまでくれて・・・。
(迷惑かけっぱなしだな・・・・・・私・・・)
缶コーヒーを受け取りながら、そんなことを思う。
「いいんですよ缶コーヒーくらい。気にしないで下さい」
私の心を読んだかのようにフォローしてくれるお姉さん。
(フォローまでしてくれて・・・ダメだな私)
「あぁまた・・・笑顔、笑顔~かわいいんですから・・・ね?」
店員さんが笑顔でそう言ってくれる。
「・・・・・・・・・・・・ありがとうございます」
かなり間をおいて、やっと一言だけ呟いた。
「・・・・・・・・・・・・かわいい」
お姉さんが顔を横に背け、少し顔を赤くする店員さん。
「・・・・・・えっ?」
「彼氏さんが羨ましい・・・こんな可愛らしい彼女さんがいて・・・。しかも健気で、いいなぁ」
「あ・・・えっ・・・・・・」
こういう風に褒められた時にどうすればいいのかわからない。これが社交辞令なのか?もし、社交辞令じゃなかったら否定すればいいのか?肯定すればいいのか?
どう返事したら、相手を不快にさせないのかがわからない。
だから・・・・・・
「あ・・・・・・うっ、その・・・」
「可愛いんだから、ありがとうって言っちゃえばいいんですよ~。実際にめちゃめちゃ可愛いんですから・・・ね?」
「ッ!」
(・・・・・・このやりとり)
健一と知り合って間もない時に同じようなやりとりがあった・・・
私が褒められてうまく返せないとき、そうやって肯定してくれた。ちゃかすようでもなく、重くもなく、でも真剣な声。
「んっ?どうしました?あ、慣れなれしかったですか?」
「そ、そんなこと」
「いや~私なれ慣れしいんですかね?知り合いの人にもよく怒られるんですよ~。すぐに調子にのって、人との距離がわからなくなくなってるって」
「・・・・・・私に似てるって人ですか?」
店員さんに少し怯えながら、恐る恐る聞く。
「そうなんですよ。初めてバイトで入ってきた時はビックリしました。こんなに小さい子が・・・ってしかも、下着専門店に・・・今でも理由は話してくれないんですけど。ま、理由は仕事を一緒にしてて大体わかってきましたけど」
人懐っこい笑みで嬉しそうに語る店員さん、その姿にこっちまで胸が温かくなりほんのり嬉しくなる。
(・・・本当に仲がいいんだなぁ)
話し方で、二人が絆で繋がっているのが雰囲気で伝わってくる。
私達も仲がいい・・・健一は私のことを大切にしてくれてる。私があんまりうまく喋れない時や言葉が出ないとき、静かに待ってくれる。会うときは必ず先に待っててくれる(1時間前から待つのは逆にプレシャーになるけど)。
(私は健一に何をしてあげられてるんだろう?何の役にたってるんだろう?)
私も健一のことが好きだ。でも、積極的に動いていない。
いつも受身だ。
いつも消極的だ。
「・・・・・・・・ふふっ」
「ぁ。その・・・すいません」
(・・・うぅ、恥ずかしい)
つい自分の世界に入ってしまっていた。
顔が熱くなるのが自分でもわかり、下を向いて隠す。
「何も考えないで、ドンっとぶつかっていけばいいんですよ。それでもし失敗したり、思うようにいかなかったとしても二人に絆がきちんとあれば解決されますよ、・・・ね?」
「あっ」
目を少し細め、受け入れてくれるような優しい表情で髪を撫でてくれる。
私は顔を上げようとするけど。
「そのまま下を向いてていいですよ。気にしないで下さい」
温かい声でそう言って。
「彼氏さんは優しい方ですか?」
「・・・・・・はい。とっても優しい人です」
顔を見ないことと髪を撫でられてることでリラックスしているのだろう。私は本音を隠さずに言えた。
「そうですか・・・何か問題があるんですか?お二人の間に?」
「・・・・・・いぇ、ただ、その・・・・・・・・・」
うまく言葉に出来ない。
・・・でも。
でも。
ずっと静かにただ髪を撫でて待っていてくれるお姉さん。
「・・・・・・・・・私、受身で消極的で・・・いつも行動してくれるのは彼・・・健一で私はそれに合わせるだけで・・・でも健一はそんな私に優しくて・・・・・・うまく言葉に出来ない、会話も下手な私にいつも一緒にいてくれて・・・・・・でも、その・・・・・・・・・夜はそんなだから、その・・・受身で何も出来なくて・・・うまく身体を重ねられなくて」
後半は恥ずかしくて、声も小さくて聞き取りずらい感じになってしまったのに。
「そうなんですか、わかりました。初対面の私によく話してくれて・・・。プライベートなお話なのに、ありがとうございます」
優しい声で非難もせずにそう言ってくれた。
「だから、自分からアプローチしようと思ったんですか?」
自分の前髪の隙間からお姉さんの人差し指が私のカバンを指差したのがわかり・・・。
・・・・・・・・・・。
「あぁ、ますます俯いちゃった!ご、ごめんなさい!・・・でもかわいい!!萌え!」
優しく柔らかい声が一転、甲高いトーンに変わり、頭を抱えられ上半身でギュッとされた。
(うわあぁぁ・・・何々!?抱きしめられたの!?)
頭が混乱するけど。
(・・・でも良い匂い・・・後、胸すごい!)
服の上からでも大きめだとは思っていたけど、上半身を密着させられると身体の感触がよくわかり・・・。
(か、完敗だ・・・)
自分の胸と想像内で比べる、圧倒的な敗北・・・勝負にすらなってない。
完敗。
惨敗。
圧倒的惜敗。
そんな言葉が頭を駆け巡る。
「・・・あぁ!どうしてかわかんないけど、さらに俯いちゃった!これほぼ90度じゃないですか!?」
慌ててお姉さんは離れた。
「あっ」
良い匂いと暖かい体温が見る見る間に消えていき、どこか残念な気持ちになってしまった。
「大丈夫ですか?頭痛くないですか?」
顔を上げた私に心配そうに、そして早口で声をかけてくれるお姉さん。
「い、いぇ、大丈夫です」
自分が告白したこと、抱きしめられたこと、お姉さんの匂い、胸の感触・・・そういう事柄が頭の中でグルグル回って頭が回らない。
「そうですか?ごめんなさい、混乱させたみたいで・・・」
「いぇ、途中からは意味不明なこと考えてたので」
「んっ?意味不明なこと?」
ついお姉さんの胸のほうに視線がいってしまう。
「あぁ、そのあの、と、とりあえず大丈夫です。元気です」
胸から目を反らし噛みながらもなんとか大丈夫なことを伝える。
「・・・・・・」
探るような眼差しで私の顔や動きを見るお姉さんだけど、すぐに。
「そう?ならよかった。雰囲気も声の感じもずいぶん元気になったから、安心しました」
「あっ」
確かにさっきまでのふさぎ込んでいた気持ちや羞恥心が消えていた。
(だけど、スタイルの件でちょっと複雑な気分・・・)
「あれ?また落ち込んだ感じに・・・抱きしめますか?」
「い、いぇ。大丈夫です」
(今抱きしめられたら余計に落ちこんじゃうよ)
「おかしいなぁ、愛ならこれで一発なのに・・・」
「えっ?」
「あ、いぇ。こっちの話です」
手で物を右から左に移す動作をするお姉さん。
「ふふっでも、きっと彼氏さんは喜んでくれると思いますよ。だって一生懸命選んだものですし、それに・・・」
少し間をおいて、お姉さんは。
「それに少しでも貴方が彼氏さんの・・・二人のために行動したことなら、きっと喜んでくれると思いますよ」
温かい笑顔でそう言ってくれた。
「・・・・・・はい」
さっきまでの不安、スタイルのこと、自分の行動力の少なさ、そういったことがその笑顔にゆっくり溶けて消えていく気がした。
「あっ!もうこんな時間!!すいません。お店に戻らないと・・・」
「そ、そうですね。長々と・・・すいませっ」
自分の唇に人差し指を立てシーっと「喋るな」のポーズをとるお姉さん。
「えっ?」
「謝らなくていいんですよ。自分の好きでやってることですから・・・ね?」
やや前かがみになり目線を私に合わしてそう言ってくれる店員さん。
笑顔だけど真面目な目つき。
「・・・・・・はい・・・えっと・・・ありがとうございます!」
「うん、いい声。頑張ってね~」
太陽のような抜群の笑みを残し手を走り去っていくお姉さん。
「・・・・・・よしっ」
下着の入った鞄をギュっと抱きしめる。
健一の視点
「う~ん・・・どうしたもんかなぁ」
(こう言ったことは人に相談しにくいからなぁ。それに言ったことがバレたらますます、由美が気にするし、下手したら・・・)
「う~ん」
(なかなか行動出来ないなぁ)
いつもなら勢いと友達にでも相談して、んで・・・まぁその、勢いで行動したら何とかなるんだけど・・・。
(デリケートな問題だからなぁ)
初体験を思い出す、由美はむちゃくちゃ震えていた。
俺も確かに震えていたけど、由美・・・彼女は桁違いだった。
(ほんと、生まれたての小鹿くらい震えてたもんな)
懐かしい思い出。
ヤルのに4時間くらいかかったもんな・・・3回目でやっと。
「う~ん、う~ん」
机の上に突っ伏す。解決策がまるで思い浮かばん。
(困った時のクークルさんなんだが、どうしたらいいのか)
大体、検索ワードが思い浮かばん。
白い画面にピコピコと黒い線が点滅している。
「う~ん・・・・・・・・・・・・あっ!」
片頬を机に押し付けながら唸っていると、突然思い出した。
カタカタっと小気味よいタッチである単語をキーボードで打ち込む。
「どうかな?・・・あ、結構あるなぁ」
(何もしないよりマシかな?)
こんなことで状況を打破出来るとは思えないけど、まぁ、ないよりマシか、うん!!
3
続・健一の視点
「こんばんは」
ピンポーンという音と共に扉が開く。
「・・・玄関の扉開いてる」
微かに目じりに皺をよせている。声も心なしか固い。
「万が一があるから」
最近のニュースで凶悪な事件の報道が気になるのだろう。絶対に鍵をかけておくように言われていたのを忘れていた。
「・・・ごめん。気をつける」
(う、結構怒ってるな)
彼女と一緒にすごす様になって大体、雰囲気で感情がわかるようになった。
「ほんと気をつけるよ。うん、ほんと今度は絶対に約束する」
由美の真剣な瞳を見て、こちらも真面目に頭を下げ謝る。
「・・・万が一がほんとにあるから、もし何かあったら・・」
下を向いてしまい、そのまま何も喋らなくなる由美。
(あぁ、こりゃあ変な想像してるな)
彼女は基本的にネガティブだ。最近のニュースの被害者のことを俺に重ねているんだろう。
「ごめん、次は絶対カギ掛けとく。もう由美がきても開けない」
俺は真剣な声でそう言った。
「えっ?」
「声が似てる人だけかも知れないし、もう誰が来ても開けない、約束する」「いや、あの、それは極端じゃ・・・」
「・・・いやもう開けない」
見るからに落ち着きのない様子と焦った顔で由美がフォローしてくる。
「私や知人の人なら開けたらいいよ、うん」
「いや、偽者かもしれない。世の中には似てる人が三人いるって話だし」
彼女の慌てた様子に笑いそうになりながらも、真面目な顔を作り続ける。
「そ、そんな・・・そこまでしなくても」
「いや万が一があるから」
「・・・・・・ひょっとして怒ってる?」
さすがに変だと思ったのだろう。恐る恐る、ビクビクしながら聞いてくる由美。
「・・・・・・」
(俺、意地悪なことしてるな)
やりすぎかな?と思いながらも沈黙を貫き、下を向く俺。
「ご、ごめん。言い過ぎた?こ、今度から注意してくれればそれでいいから、ね?あ、お菓子食べる?」
(プッ!お菓子って!そんなので機嫌が直るか!俺は小学生か!?)
そうツッコミたいけど、下を向き続ける。
「・・・・・・」
「あっと、えっと。あ、合言葉決めよう!もし、私だったら特定のキーワードを言うってやつ!これならOKでしょ?」
名案だといわんばかりに声を弾ませてそう言う彼女。
(くははーっ!小学生か!?可愛すぎる!)
「ぷっ!」
思わず噴出してしまった。
「えっ?」
顔を上げ、笑った顔を彼女に見せた。
「あっ!演技!?もうほんとに怒ったと思ったんだから!」
控え目な身体を俺にぶつけて、全身で抗議してくる由美。
「あはは、ごめんごめん。でも合言葉ってお菓子って!・・・ぷはははーーーっ!!」
密着している彼女の身体を、軽く抱きしめながら笑ってしまう俺。
「もううるさい!どうせ、私は子供っぽいですよ!ふんっ!」
俺の腕の中でプンプン怒る由美。
(もう、ネガティブな想像はなくなったみたいだな)
ほっておくとすぐに後ろ向きな思考になってしまう由美。
どうすればいいのか?・・・研究した結果。
彼女の思考をネガティブな方向にいかせないようにワザとまったく違う行動、発言をするのだ!
(って必殺技みたいに言ってみてもなぁ)
でも初めのうちは本当にそうだったのだが・・・。
「お菓子大好きで、すぐに騙されやすくて!合言葉のダメな女ですよ!」
まだ俺の腕の中でプンスカ怒っている由美。
(しかし、絶対に腕の中から出ない彼女・・・萌え!!)
「ごめんごめん、怒らないで。かわいいじゃん?お菓子好き。それに合言葉もいいと思うよ」
「・・・・・・いつもそうなんだから・・・ありがとう」
大人しくなり、胸板に顔を近づけて呟く。
「えっ?」
小さくて聞こえないほどの音量でそういう由美。
「・・・別に」
「いやいや気にしないで、こっちも楽しいから~」
「・・・?・・・って聞こえてるじゃん!」
真っ赤になって怒る彼女、あぁせっかく大人しくなってたのに・・・まぁ楽しいからいいんだけど。
「いや~由美は可愛いなぁ。もう大好き♥」
腕の中で小さく暴れる。
手が胸に当たるがぜんぜん痛くない。
(由美はからかうと結構喋るなぁ)
胸を叩かれながら、友達や両親に紹介したことを思い出す。
「もう!大体ね健一はすぐに私をからかう癖があるよ。初めてあった時だって・・・んっ?どうしたの?」
彼女の目をじっと見つめる。
(心は開いてるし、由美も開いてくれてるんだ。何とかなるよな)
インターネットで見たサイトや2chの掲示板を思い出す。
(ま、こんなもんで、いきなり解決できるとは思ってないけどな)
少しでも何か解決の糸口になればとは思う。
「ねっ?大丈夫?ひょっとして痛かった?」
「えっ?・・・あぁ、大丈夫。由美のあまりの可愛さに意識を失ってた」
軽口を叩くが。
「・・・・・・」
何かを探るような視線で由美が見つめてくる。
「・・・・・・何か変。本当に大丈夫?」
彼女の声が心配するようなトーンに変わる。
「あぁ大丈夫少し考え事。しょうもないことだよ~」
優しい声でそう言って、頭を撫でてやる。
「んっ・・・もし悩みがあったら言ってね。私は健一の彼女なんだから」
「うん・・・・・・ありがとう」
俺は彼女の優しさに答えるようにゆっくりゆっくり撫でる。
「んんっ、ふふっ・・・はふぅ・・・・・・っン」
子犬のように胸板に頭をスリスリと擦り付る。
良い匂いもするし、嬉しいし、可愛い・・・けど・・・。
「・・・あんまりくっ付き過ぎないでくれると嬉しいかな、ハハッ」
「えっ熱かった?ごめん!」
小動物のように素早く腕の中から退こうとする由美。
ぎゅっ。
離れようとする彼女を、腕に少し力を込め離さないようにする。
「ふぇ?」
「いや、熱いとかじゃなくて・・・・・・・ねっ?」
微かに腰を上下させた。
「・・・・・・っ!!」
一瞬で彼女が赤面した。
(こんなに可愛い彼女にくっ付かれて、スリスリされたらそりゃあ勃ちゃうでしょ)
「・・・・・・」
完全に黙り込む由美。
いつもならここで俺が誘うところだ。
付き合って1年。これは変わらない。
・・・・・・でも。
「ひゃうん!」
思わず変な声が出てしまった。
「・・・・・・」
震える手が俺の下半身を捕らえた。
「えっとっ・・・にゃうっ!!」
下半身からぞくぞくと震えるような快感が走り、変な声が出てしまう。
「あの、ンッ!由美さん?・・・その、これは・・・ん」
恐る恐るとした手つきで、ジーンズの上から股間を触られる。
「ね?あの、ね?その・・・」
初めての向こうからの愛撫。
下半身からの甘い疼き。
それらに頭がうまく働かない。
「・・・・・・」
彼女は下を向いたまま、何も言わないまま、ジーパンの膨らみを撫でたり、形を確認するかのようになぞる。
「んっ、由美の方こそ大丈夫か?い、いつもと違うみたいだけど」
何とか落ち着いた声を意識しながら、そう語りかける。
「っ!・・・・・・・・・」
一瞬、ビクっと震えそのまま腕の中から抜け出す由美。
(うわ、耳まで真っ赤!)
離れる瞬間見えた耳は真っ赤に染まっており、彼女がかなりの決意で
こういった行為をしているのかがわかった。
「・・・・・・」
俯いたまま何も喋らない小動物。
「・・・・・・・・・・」
声を掛けたほうがいいのか?、それともこのまま黙っていればいいのか?どれがベストなのか?ほとんど思考停止中の状態。
「・・・・・・」
何分なのか、何秒なのか、よくわかないが彼女が微かに頷くと・・・。
着ていたトップスの白い服に手を伸ばし、そのまま・・・。
「えっ?」
普段ならしない行動。
そして、服の下か出てきたものに二重にビックリした。
「・・・・・・・・・ど、どう?」
本当に小さな声、泣きそうな声。
「・・・・・・すごく可愛くていやらしくて、・・・それ以上に嬉しい」
心の中がじんわり暖かくなってきた。
興奮よりも、それ以上に
性に少しでも積極的になろう
少しでも二人の関係をよくしよう
そう思ってくれたこと。
恥ずかしがりやな彼女がこんな大胆な行動をしてくれたことが本当に嬉しい。
「・・・・・・そう」
ポツリとそう呟くと、さらに下を向く由美。
「てか由美、下向きすぎ!これほぼ90度じゃない!?」
「えっあ、そ、そうだね」
自分でもそう思っていたのだろう。上を向く由美。
「うっ」
上半身を起こした状態・・・普通の普段の状態なのに・・・。
上半身は黒いブラのみ。
ブラヒモの辺りに細かい花の刺繍がされており、SEXYだ。
そして胸を本来守り、包むはずのカップは極小で色違いの部分を隠すくらいしかない。少し動けば見えてしまいそうなくらいで、完全で見せるための下着。
(何か女の子がエロい格好してるみたいで、そのいやらしいな)
正直、由美はツルペタだ。
身長も低い。
さらに童顔。
さらにさらに高校の制服も今でも余裕で着れる。
この前中学の制服着てみて~、って言ったら頑固拒否された(着れるんだろうけど、着れるという事実を知られたくないと俺的には予想している)。
そんな彼女だから、こういったブラが似合うとは思っていなかった・・・が・・・。
女性がというより少女という表現が似合う彼女が身につけると、そのギャップがいやらしくて、エロい。
その上、耳まで真っ赤にしてやや俯いている姿・・・反則でしょう!?
(何か今日はずいぶん気合の入った服を着てるとは思ってたけど・・・)
まさか、こんなことをしてくるとは・・・。
つい下着をチラチラみてしまい、うまく話せない。
「あ~、その」
こめかみを人差し指で掻きながら、何か言おう言おうと考えていたら・・・。
「・・・・・・」
彼女は何も言わず腰を捻り、穿いているピンク色の段々に重なったスカートを脱ぎ始めた。
「あっ!」
(そっちも目の前で、自分で脱いじゃうの!?)
あたふたしながらも止めろとか待ってっと言わない自分が、情けないやら、なんやら。
「うわっ」
思わず声が出てしまった。
下のショーツも黒色・・・上と同じ・・・・・・・面積も。
面積も同じく極上・・・じゃなかった極小できわどい部分を何とか隠せているくらい。
端っこのふちにはバラの花の刺繍がされており、エロさを醸し出している。
「・・・・・・」
両肘を手で抱え、モジモジ、チラチラしながら、見ながらこちらの反応を伺っている。
(仲間になりたそうに見ている・・・じゃなくて)
目の前の物体のあまりの可愛さに思考が混乱している。
「あぁ・・・えっと・・・・・・可愛い!!」
思わず近づいて抱きしめてしまう。
「あぅ!」
「あぁ、もうたまんない!何これ!可愛すぎる!しかも、勇気を出してこんな格好まで・・・めちゃめちゃ嬉しいよ!!」
思考が駄々漏れ状態。
思ったことを何も考えず、そのまま言ってしまっている。
「んふふぅ~。あぁ、嬉しい!可愛い!最高!本当にありがとう!」
「あ、あのちょっと痛いかも」
「あぁ、ごめん!」
あまりにテンションが上がってしまい、つい強く抱きしめてしまった。
「うぅん。ちょっと強く抱きしめられてビックリしただけだから」
少し力を緩める。
「・・・・・・・・嬉しい?」
彼女が恐る恐る聞いてくる。
「めちゃめちゃ嬉しいよ。ほんと、今日という日を記念日にしよう。由美がエッチな下着を着てくれた記念日。2月4日だからニシシッと覚えよう。毎年、この日をお祝いして由美はこのエッチな下着を・・・」
「そ、そんなの絶対ダメ!」
大声で俺の発言を遮る由美。
「そう?良いとおもったんだけどなぁ」
「は、恥ずかしい」
「んふふ~そんだけ似合ってるってこと。記念日を作りたくなるくらいに・・・にゅふふ~」
自分でも気持ち悪い笑い方をしていると思うが止められない。
(彼女がこんなにも近づこうとしてくれてるんだ、俺も・・・)
「ねっねっ」
顔を下に向け、彼女に語りかける。
「んっ?」
愛らしい顔が長い睫で縁取られた瞳がこちらを正視する。
「実は・・・その・・・・」
彼女の表情、雰囲気に注意しながら喋りだす。
「ンンンッ!・・・ち、ちょっと待って」
動揺した声。手を足の指を縮こまらせながらそう言った。
「えっ?どこか痛かった?」
「そ、そういんじゃけど・・・これ声出ちゃう」
「・・・そりゃあ声出ないと意味ないから」
「・・・・・・だよね・・・うん、でも優しくゆっくりお願い」
「よし、わかった。でも痛かったらすぐに痛いっていうんだぞ、そしたらすぐに止めるから」
「んっ」
こくんっと小さく頷く。
「よしじゃあ・・・」
脇の下の薄い肉を摘み引っ張りながら引っ掻く。
「ンンンッーーーンンーーーーッッ!!」
口をギュッと結び耐える彼女。
(ちょっとかわいい)
ほっぺをほんのり赤くしながら声を出すのを我慢している姿は正直、グッと来る。
(こうするとどうなるかな?)
右脇を円を描くように指を動かしながらくすぐる。
「んんんッ!」
身体を右に寄せ耐える彼女・・・そこに。
(よっと)
残った片腕で素早くわき腹をツンツンと指を立て押す。
「ふひゃははーーーッ!!ンンッーっィぃーーッ!」
(おぉ!)
一瞬だが大声を出す彼女、2年間の付き合いだが、こんなに大きな声を出すのを聞くのは珍しい。
「はぁはぁ、そ、そういう不意打ちは反則」
むくれた表情で抗議する。
「アハハでもさ、いい声出てたよ。この調子で頑張れば大声出すのもすぐに慣れるって」
「ん、頑張る・・・もっとお願い」
(こんなよくわからん考えに賛同してくれて、しかもこんな真剣に・・・俺も頑張ろう)
ネットで仕入れた知識を頭に思い浮かべながら手を動かす。
「よし、まかせろ」
軽いタッチで親指、人差し指、中指で左脇の下を掻き回す。
「んっ!ンーーーッ!!ッふっ!・・・・・・んふふっ!」
脇を締め、手でシーツをギュっと掴む。
止めてとは言わないが、脇を締め指をガードする。
(う~ん。指を動かしにくいなぁ)
三本の指は脇と二の腕に圧迫され動かしにくい。
(よしッ)
親指と中指を脇から外し、人差し指で脇のくぼみの柔らかい肉をカリカリと引っ掻く。
「ッッッ!!!」
反応は劇的だった。
一瞬、硬直し・・・そして目を見開き・・・・・・。
「ふひゃははははーーーーーッ!!!ダメダメーーーッ!!・・・きゃはっはっはーーーーーッ!!!」
顔を上に反らし、聞いたことのないくらい絶叫。
「おぉ!」
あまりの反応に指を止めて、離してしまった。
「はぁはぁ、はぁはぁ」
枕に顔を預け、ぐったりしてしまう由美。
「だ、大丈夫。ちょっとビックリしただけ・・・はぁはぁ、続けて」
「・・・うん、わかった。何度も言うようだけど、痛かったら言うんだぞ」
「うん」
(よし、ちょっと動かしただけであれだけ大声を出せたら・・・)
正直あんまり期待してなかっただけに、がぜんヤル気が出てきた。
(次はへその辺りとかいいかな?)
ネットで書いてあったことを思い出す。
「んっ!ンンンーーーっ!!・・・ふっ・・・ふひゃ!・・・ンンっ!」
拳を作りギュっと握り耐える。
(うっ、かわいい!これは・・・変にハマりそうっ)
少し赤面した顔。
眉間にギュっと皺を寄せ、せつなそうな表情。
柔らかそうな唇から出る荒い吐息。
内股になり耐える姿。
そういった姿を自分がさせてると思うと・・・正直めちゃめちゃ興奮する。
(マズイ、本来の目的を忘れてしまいそうだ)
何とか平常心を保ちつつ。
「ゆっくりするから安心しろよ」
激しく、めちゃめちゃにしそうな気持ちと行動をグッと抑え・・・。
何も守るものがない状態、素肌のへそ穴部分を円を描きなぞる。
「んんーーッ!ふっ・・・くッ!」
指で優しくへその淵の部分をなぞりながら、もう片方の手でへその少し下部分・・・下腹部の辺りを揉むようにくすぐる。
「ぶひゃはははーーーーッ!!はやひゃははーーーッ!!やめっっ!!・・・
くはははーーーッ!ヒィーーッ!!」
腹筋に力が入り、身体を丸めるように上半身を反らそうとするが・・・。
「ヒャハハーーーーッ!・・・んんんーーーーッッ!!、ンッ!!・・・くきゃはははははーーーーーーーッ!!!」
指の位置を少しずらし、力の入った腹筋の辺りを高速で指を動かす。10本の指が縦横無尽に由美の引き締まったお腹の上をうねうねと蠢く。
「ひゃああああはっははーーーーッ!!クハハハハっーーーッッ!!んっんぎぎっ・・・フヒャハハハハハッーーーーーッッ!!!」
何とか声を出さないように堪えるみたいだけど、すぐに奇声を発してしまう由美。
(まだまだ、声を出すのは躊躇ってるみたいだな)
確かに大声を出してはいるけど、今の状況は強引に出させてるだけの状態。
(よし、もっと声を・・・今の気持ちを言葉に出していい、そう思ってもらわないといけないもんな)
彼女のほうから、自然と・・・楽しんでくれるようにしないといけない。
(そうじゃないと正直、俺だけが面白いだけになっちゃうからな)
指の動きを少し緩める。
「はぁはぁ!はぁはぁ!んっん・・・ヒャウン!」
半開きになった口から熱そうな息を吐き出しながら、抑えきれない声を出す。
「何も考えずにどんどん声出してもらっていいからな。恥ずかしいとか、俺に嫌われるとかそんなこと絶対にないし、何も気にせずに・・・な?」
出来るだけ優しい声で、諭すように言う。
「ハァハァッ・・・んっ・・・・・・本当?」
顔に少し汗をかき、潤んだ瞳に弱弱しい声でそう俺に問いかけてくる恋人。
俺の答えは、
「もちろん!」
笑顔でそう一言。
彼女と一緒にほにゃっと笑う。
目と目が合い、二人の心が繋がっている気がした。
柔らかい雰囲気が二人の間に流れるが・・・・・・。
「・・・へへへっ、・・・・・・・・・・・・ンッ?、ひゃうんッ!・・・アヒャひゃははやひゃひゃはははははーーーーーッ!!くすぐっだいっーーッ!ヒィィイイイイーーーッ!」
目線を少し下に、指をどんどん↓に↓に・・・引き締まった太ももの内側を押す。
「ヒヒャアアアハッハハハーーーーッ!!そこダメダメダメーーーーッ!!!は、反則ッうぐっはっはははーーーーッ!」
内股という微妙なライン。ほんの少し指を動かすと面積の極端に少ない黒いショーツにあたるような微妙なゾーン。
普段、この当たりを触るなら、俺から顔を反らし目線を反らしグッと耐えるような表情をする由美。
そして微かに足を開いてくれる、ほんの微かだけど。
その姿はめちゃめちゃ恥ずかしそうで、可愛くて、俺はギュッと抱きしめる・・・普段なら・・・・・・。
しかし今は顔をブンブンと振り、足の指を反らす激しい反応。
いつもと間逆の反応・・・いつもの控えめな声とは間逆の反応・・・正直、面白い。
(おぉ、ショーツが食い込んで・・・エロい!!)
クロッチの部分に食い込み、ただでさえ小さい布がさらに面積が少なくなってしまう。
普段はこんなに小さい面積の下着は履かない分、余計にいやらしく見える。
「んッン~~~ッ!!!・・・・・・ブヒャハハハハーーーッ見ないでっ!聞かないでッ!は、はずかしッッ、ひゃああああはっははーーーッ!!ふぐぅうーーッ!」
指を何とか弾こう、防ごうと考えているのだろう。腰を引き内股にし、足と足を擦り俺の指を抜こうとするけど。
(うわ、激しく動くから余計に・・・ちょっとはみ出てる!)
薄い繊毛が下着からずれて微かに見えてしまう。
(ま、まずいちょっとやらしい気持ちに・・・)
まさかくすぐりなんかで興奮してしまってエロい気分になってしまうとは予想外だった。
しかも・・・。
(弾力があってしかも、吸い付くような感触・・・気持ちいい)
柔らかく、すべすべした感触が手と指から強く伝わってくる。
(太もも気持ちいぃ~・・・でも動かしにくい)
命一杯手を挟み、拘束する由美・・・・・・しかし・・・。
「ほれほれ~、ほれ~これならどう?」
挟まれた手を少し動かし、軽く指を太ももに刺すように立てる・・・そして。
「・・・ッ!!クヒャヒャヒャーーーッ!こ、こんなの耐えられなッ!ぐはっははーーーッはぐぅうーーッ!!!」
そして、そのまま指を太ももに突き刺して、プルプル振動させる。
「これダメーーーーッふひゃはははーーーーッ!!キャハハハーーーッ!
降参、こ、こうさッあははははっははーーッ!」
足をバタバタさせ、手の拘束を解く由美。
自由になった手で内股を右側と左側をリズミカルに突っつく。
「ズルイっ!キャハハーーーっくすぐっだいーーっ!お、オカシグっ!おがしくーーーーなっっアッハハハハーーーーっ!!ふひゃはははーーーーっ!」
やや裏返った大声を発しながら、腰と足をジタバタさせる。
「おかしいから笑ってるんだろ?何もおかしいことないじゃん?・・・おかしいから笑ってるんだから、あはは~~」
普段見れない彼女の痴態についつい調子にのってくすぐってしまう。
「あひゃははははーーーーっ!!何も、何も考えっふひゃはははーーーーっ!!ギブっ!ぎぶッッ、くひゃはははははーーーーーッ!!!」
白磁のようななめらかで弾力のある太ももに指が跳ねかってくる感触が楽しい。
楽しいのでつい、ジタバタして抵抗してくるふくらはぎ、踵、足の裏を避け、ツンツンと太ももの付け根辺りを突き、そして押し込んだ指をブルブル振動させる。
由美と贅肉のない、引き締まった大腿部が悲鳴をあげた。
「ぶひゃはははははーーーーーーッ振動ップルプルっ!プルっヒッヒッヒーーーーっ!!ツンツンもっキャハハハハーーーーッ!!ダメーーーーッッ!くひゃひゃひゃーーッ変にッ!へんになる"ーーーックハハハハハハーーーーーッ!!」
「ふふふっ、いい感じ~・・・イタっ!」
両足の間に挟まって、くすぐっていたので前のめりになっていたところを足の踵で背中を強打された。
「むぅ・・・」
(前のめりだから、足が当たり易いな)
太ももは捨てがたいが、あんまりやり過ぎると本来の意味とは違ってくるから一旦手を止め、足の間から抜ける。
「はぁはぁはぁ!」
ほっぺを真っ赤にし、顔を横にしながら荒い息を短く連続で吐き出している。
「大丈夫?・・・痛くない?苦しくない?」
微かに痙攣している足の付け根と上下している喉を見て心配になってきた。
「う、うん。だいひぃようぶ。ハァハァ。ちょっとびっふりしひゃだけ。ハァハァハァ!」
4
(舌足らずっになってるけど・・・)
荒い息を吐いてはいるけど、意識ははっきりしてるし、問題はなさそうだ。
「そう?じゃあ再開~」
身体をずらして移動し足首を掴み、土踏まずの部分を優しい力で指でゆっくり掻く。
ゆっくりゆっくりと指を立てゆっくり、ゆっくり掻き移動させる・・・上から下に・・・・・・土踏まずの柔らかい部分に爪と指が少しめり込みながらゆっくりナメクジの移動のようにゆっくり、ゆったり動かす。
「んんんっ!・・・・・・キャハハハハーーっ!ふひゃははははーーーーっ!
あ、足ーーーーッ!くすぐっだいーーっ!!アヒャヒャハハッヒャハハッーーーーーっ!!凄いいいぃぃーーーーッうぐっはっはーーー!!」
一瞬だけ声を我慢するように口をギュっと結ぶけど、すぐに笑い声が出てしまう由美。
「おそっ!ひぃひひひーーー!掻くのダメーーーっ!アヒャヒャヒャハハハハーーーーーっ!!息っ出来ない、クヒャハハハーーーー!!し、しんじゃうっ、死っあはははっはははーーーーっ!!ゆ、ゆるじてーーーーっグハッハハハハーーーーーーッ!!!」
(死んでじゃうって言いながら、笑ってるのってシュールな光景だな)
口の端から涎を垂らしながら、大声で笑い声を上げる。
彼女はジタバタと足を動かし、くすぐりから逃げようともがく。
俺は陸に上げられた魚のようにめちゃめちゃに動き、跳ねる両足。
その片足・・・右足を掴み・・・・・・。
「ふひゃはははーーーっ!ふぇっ?」
そのまま右腕で足首を挟みロックする、そして。
「ウグッハハハハーーーーーッ!待ってっ待っぐっははははーーーーっ!!ヒッヒッヒッ!離してっ!いじめちゃダメーーっヒィーーーっ!きゃははははーーーーーっ!!」
「えぇ~いじめてないよ~。だって由美、すごい笑顔じゃん~~」
(まずい・・・・・・楽しい~~!)
自分の指のちょっとした動きに大の大人が翻弄される快感。
気分が高揚してくる。
(いろいろと試してして、どんな場所が好きか?どんな動きが好きか?研究してみよう)
目的とは少しずつずれていく思考、行動・・・でも止められない、止めたくない。
今度は土踏まずの部分に指で大きい円を描き、そのままナルトを描くように狭めていく。
「ふぐぅううううーーーーッッ!ンンンッッ!!!・・・あひゃひゃッあはははひゃひゃはははははーーーーーッ!!グチャグチャになるッ頭、はぐぅうーーッ頭おかじくなるーー!アハハハッハッハハハーーーーッ!!」
右腕と腹の部分に挟んだ足が動こうと、力が込められるのがわかる・・・しかし、そこは男と女、まして相手は小柄である。
由美の足が少し揺れるだけでまったく抜ける気配はない、まぁ抜かす気はないんだけど。
(うわ~足の指が反り返ってる・・・しかも、左足もめちゃめちゃ暴れてるし、ちょっと痛い)
人差し指で円をゆっくり描くたびに、絶叫が部屋に響き渡り、足の指は反り返る(ツラないか心配なくらい反ってる)。
さらに、自由にならない右足とは反対にまったく放置している左足で俺の右手を蹴り、外そうとしてくる・・・あんまし痛くはないけど。
(円を描くだけってのも芸がないな~)
腕でロックしているので両手が開いている。もう一方を使わない手はない。
柔らかい土踏まずの部分で指を動かすたびに反り返りピクピクしている足指・・・親指から小指までの付け根をピアノの端から端まで一気に叩くように手で引っ掻いた。
「ッッ!!!」
一瞬、本の一瞬だけ彼女の身体が彫刻のように静止し・・・。
「ぶひゃはやひゃひゃひゃはははーーーーーーーッ!!!!はひゃはははははははーーーーッ!!ひゃひゃひゃひゃっははははーーーーーーっ!!!ひっひっっひーーーーーッ!!」
小柄な身体でこんな大きな声が出るのか、そう思うくらいの聞いたことのない大絶叫。
近隣の人から苦情が来そうな声。
でも、止めない。
先ほど逆に小指から親指の根元を一気になぞりながら、引っ掻く。
もちろん、土踏まずの部分に円を描きながら・・・。
二つの責めに・・・。
「グハッハハハーーーー!!アハハハッハハハーーーーッッ!!!くすぐったいーーっ!!くすぐっだいーーッ!くすぐっだいーーーーッッ!!!ひひゃひゃははははははーーーーーーーーッ!!!」
バン!バン!バン!
両手で見ているこっちが痛そうなくらいにベッドのマットを叩き、首をおかしいくらい振り回す彼女。
(そろそろ、まずいか)
彼女の反応から限界を悟り手を離し、腕のロックも外した。
「ふ、ひゃ。ひゃひゃ、ハァハァっ!あはっ、はぁはぁ!んんぅ」
もうくすぐっていないのに、笑い声を微かにあげ、身体をピクピク痙攣させる由美。
「だ、大丈夫?」
力なく横になっている彼女に顔を近づける。
(まずい・・・面白いからついつい調子のって・・・完全に目的を忘れてしまってた)
「はぁはぁはぁ!ふひゃう、こ、こんんなに、はぁはぁ声出したの、はぁ初めふぇ」
トロンした目でこっちを見つめる彼女・・・屈んでいるので由美の荒い息がかかる。
「ごめん、あんまりにも、その、楽しいから・・・・・・やり過ぎた、ごめん」
彼女の言葉の中に「痛い」という単語が出てこないか、注意していたのは確かだけど、それでもやり過ぎた。
「うぅうん。私もこんなに、はぁはぁ、声出したの生まれて初めて。はぁ、ある意味こんなに思ったこと口に出したのも、初めてかも・・・あははっ、はぁはぁ」
「そっか」
俺は彼女の言葉を聞いてそっとキスした。
「んっ」
いつもより湿った唇。
ちゅ、ちゅ、ちゅ。
薄い唇を優しく吸い、すぐに離すフレンチなキス。
(ディープなほうのキスは出来ないよな)
今、口を塞いだら呼吸が苦しくて彼女が死んじゃう。
「はぁはぁっ!んっ、ちゅ、ちゅ、はぁん、好きぃ」
由美の下唇を自分の口に含み少し噛み、持ち主に戻す。
「んっ、えへへ~」
可愛らしく微笑み、頭を少し上げ俺の胸板に擦り付ける。
「可愛いな~もう小動物か、キミは~」
俺もそのまま横になり、彼女の頭を少し上げそのまま抱きつこうとしたら。
「えっへへ~~!」
「うぉ!」
彼女の背中を抱きしめる前に由美のほうから飛び込んできた。
「はぁはぁ、んふふ~すごく、すっごく、くすぐったんだから・・・んふふ~ん、ふふふん~」
謎の鼻歌を歌いながら、由美のほうから抱きついてきた。
(うわ、こんなの初めて・・・・・・めちゃめちゃ嬉しい!!)
普段は俺のほうから抱きついて、それを受け入れる形が俺達の基本スタイルなのに。
「う~ん、抱きつきにくい~。こうすれば届くかな~?」
小さい手で俺を抱きしめようと四苦八苦する由美。
「ははっ、大丈夫。俺が・・・」
そう言い、そのままいつものように抱きしめる。
すっぽり俺の中に入る由美。
「ふふっやっぱり私達にはこの形が一番落ち着くね?」
そう言って、彼女からのキス。
ただ、唇を押し付けるだけのキス。
「そう?」
彼女の目を見ながら、軽い口調でそう言った。
「えっ?」
彼女の寂しげな瞳が微かに揺れる。
「由美の小さい手で俺を抱きしめようとしてくれるのも嬉しいし、由美のほうからキスしてくれると嬉しいし、由美のほうから脱いでくれるのも、エッチな誘いをしてくれるのも嬉しいし、由美が大きい声で本音を言ってくれるのも嬉しいよ」
目を反らさずに言い切り、そして。
「今日はありがとう。エッチな下着着てくれて・・・勇気がいったでしょ?本当にありがとう・・嬉しい」
「ッ!」
もともと大きな瞳がさらに見開かれ・・・。
ボッと単語がピッタリなくらい顔が赤くなった。
(可愛いっ!けど、何だかこっちも・・・)
彼女の色が移ったのか、こっちも恥ずかしく・・・顔が赤くなるのがわかった。
「・・・・・・こっちこそありがとう。いつも気にかけてくれて、ほんとに嬉しい」
真っ赤な顔ではにかむ由美。
「うっ」
(まずい、ますます顔がっ)
自分でもどんどん脈が速くなり、顔の体温が上がっていくのがわかる。
「んっ?健一?」
俺は顔を下に向け、ガードする。
「んっ?あっ、さては恥ずかしいんだ~」
(くそ~こういうのもいつもと反対になってしまうなんて!)
こうやって恥ずかしがるのはいつもは彼女のほう、俺がこうなのは珍しい。
「ほれほれ~真っ赤な顔を見せてごらん~、んっ?んっ?」
いつもはからかわれるほうが多いからだろう。由美はここぞとばかりに調子に乗る。
(く~そ~まずい、まずい)
普段こういったシチュエーションに慣れていないからだろう。からかわれるとますます、体温が上がっていくのがわかった。
「んっんっ?ほらほら、恥ずかしくて真っ赤になった健一ちゃんのお顔を見せてよ~」
由美は何とか下を向いている俺の顔を覗き込もうとするが、俺は顔を横に向けたり上を向いたりして誤魔化し・・・。
(こうなったら、あれしかない!)
顔をガードしながら頭を回転させる・・・出た答えは。
「恥ずかしいのかな~?いつもは私をからかってるのに~。ほら、観念してッ!・・・えっ?・・・・・・・あひゃははーッ!ち、ちょっとッンッ!アハハハーーーーッ!ダメッダメーーっ!ふひゃはははーーーっ!!は、反則っ!にゃははあっーーー!!」
がばっと起き上がり、そのまま責めていなかった左足にダイブ!
その勢いで広い土踏まずの部分を五本の指で、高速で、蹂躙していく。
「ふひゃひゃひゃははははーーーーーっ!こちょこちょっ、ゆっ許っくははははーーーーーッッ!!た、たまんなっアハハハーーーーッぎゃはっははははーー!!」
俺は真っ白な土踏まずの部分に幼児が落書きするみたいにのの字を描いたり、不規則な線を描いた。
「アハハハハーーーーっ!!ひぃっ!ヒィィィひゃひゃひゃひゃーーーー!!うぐぅぅーーー!!」
チラッと首を後ろに向け、彼女の様子を探る。
(うわっ!)
首を振り乱し、ギブアップを示すようにマットを叩く彼女の姿。
「ふふふっ、彼氏をからかった罰だ。苦しめ~苦しめ~」
「ご、ごめんな、さひゃひゃひゃはははーーーーっ!!はぁはぁっ!クハハハハーーーーッ!」
「え~、笑いながら謝っるのは誠意がないな~。本気で謝る気あるの~?」
そう言った後、足を解放し素早く自分の身体を回転させ・・・。
「あ、足っ?・・・ハァハァっ!ッッッ!くひゃひゃあひゃひゃああははははははーーーーっ!!!こ、腰っ!グハッハハハーーーッ!!ツンツンダメーーーーッ!!ブヒャハハハーーーっ!!ひ、響くっ!ひびっく、ヒャハハハーーーーッ!!!」
(まだ、思ったことを素直に言ってくれてるんだ)
俺の言ったことをまだ実践してくれていることに胸が疼く。
健気な恋人・・・そんな彼女に少しだけ覆いかぶさる形で両手で両腰辺りをランダムに突きまくった。
「あひゃひゃはやはははーーーーっ!!キャハハハーーーーっ!!ツンヅンッ!気が変になりゅーーーッ!!ギャハハハーーーーッ!!アヒャヒャアハアハッハーーーーッッ!!」
彼女が笑い声を上げながら、腰をくねらせる・・・見たこともないような
淫靡な腰使い。
黒のいやらしいショーツと相まって、余計に興奮する。
55
(うっ!この動きはエロい!!)
本人は無意識にやっているのだろうけれど、まるで男を誘っているような、騎乗位をしているような不思議な動き。
もっと見たくてより指の動きを速くしながらツンツンする。
「ギャハハハーーーッ!真っ白にッ!あひゃま真っ白に、あははははーーーーっ!!くひゃひゃひゃーーっ!!なっちゃうーーーーッ!!ブヒャハハハハーーーーッ!!ふぐぅうーーーっ!!!」
腰を狂ったように跳ねまわし、捻る由美。
(おぉ、すごい反応!しかもエロい・・・クセになりそう)
俺が指を少し動かすだけで、彼女は大声をあげ、劇的に身体を反応させる。
それが堪らなく俺の加虐性を満たしてくれる。
「ほれほれ~、こんなのとかどうかな~?」
そう言い、引き締まった腰に五本の指を軽く押し込むように突き刺し、そのまま振動させる。
「ッッ!!キャハハハヒャヒャヒャハハハハーーーーっ!!!ダメダメダメッーーーーッ!くははははーーーーッ!!触らないでっ!バカにっ!あぅぅうーーっ!なるーーーッ!!ぶひゃっ!ふひゃはやははははーーーーっ!!アーーーーっ!」
身体を思いっきり回転させ、指を外す由美。
「おわっ!」
思いのほか強い力に一端、責めを止めた。
「はひゃ、ハァハァっ!あひゃ、ひゃははっハァハァっ!しゅごぃっ、ハァハァっ!」
うつ伏せになり、荒い息を吐き続ける彼女。
お腹の辺りがスゴイ頻度で上下しているの姿がかなりくすぐったかったのがわかった。
(うわ~)
いつもは雪のように白い肌がわき腹や、腰の辺りだけ微かに赤くなっている。
「ハァハァっ!ハァハァっ!」
彼女がそのままの体勢で首の角度を変えた。
「っ!」
彼女の横顔がきちんと見える・・・。
「ハァハァっ、はふぅ、あひゃっハァハァっ!」
赤く染まった頬。
小さく上下する喉。
半開きになった口。
口端から少し出ている涎。
柔らかそうな唇。
もっとみたい・・・そんな欲求がどんどん湧き出てくる・・・・・・自分でも止められないほど・・・。
しかし、彼女の唇が半開きになり、見るからに熱そうな息をぜぇぜぇ吐いている姿を見ると・・・。
(これ以上は見るのは、・・・触るのは止めよう)
そう思うのだが、視線は顔、そして外見に似合わない、精一杯の勇気を出し、着たであろう黒い下着・・・それらから外せない。
黒い感情がどんどん、どんどん湧き出る。
湧き出る・・・。
「ふひゃう!」
気がつくと彼女の陶器のような、なめらかな肌を触っていた。
人差し指と中指で無防備な背中を上から下にツーっと這わせ・・・。
「ンッンンンっ!!くひゃっ!も、もうひゃめッ!も、ひぇんかいッッ!!!ヒャアアアアハッハハハーーーーッ!!」
そのまま、あお向けの状態でいる彼女の腰の辺りに乗り、両脇のくぼみに人差し指で穴をほじるように動かす。
「ぐひゃひゃはははーーーーっ!!ヒッヒィィーーーーッ!わ、わきっ!フヒャハハハハーーーーーッヒャヒャハハハーーーーッ!!響くっわきっワキーーーーッあははあははーーーーーーーーっ!!!」
(くに~くに~~脇の肉って柔らかいな、楽しい~プニプニで、もにゅもにゅ~)
彼女は腕をギュっと締め、ワキを蹂躙している指を拘束しようとするが・・・。
「無駄無駄~その程度じゃあ逃げられないよ~」
必死に俺の指を締め付けるが本の少し窪みの部分を引っ掻くと。
「ッッ!!ギャハッハハハーーーッ!!は、反則っ!こんなの、ひっひひゃひゃははははあーーーーーっ!!ストッッ!フクハハハァァハハーーーッ!!凄いいいいいぃぃ"ぃ"ーーーーーッ!!!ハヒャヒャハハハハーーーーッ!!ふぐぅぅーーーーッ!」
脇の凹みの薄い皮膚を本の少し指で引っ掻き、震わせる・・・それだけで由美の腕の拘束はあっさり解けてしまう。
そして子供がおもちゃを買って貰えないときにように手足をバタバタとめちゃめちゃに動かす。
「ふぐぅぅーーーッ!ハァハァっ、狂っう、ハヒャハヤヒャアヒャハハハーーーーッ!!狂じゃうーーーッぶひゃひゃひゃひゃひゃはははははーーーーーーーッ!い、いぎがッ!キャハハハハーーーーッ!!イギがっ出来ッ
!!フヒャハハハーーーッ!!!アハハハーーーっふひゃはははーーーーッ!アヒャハハヒャハハーーーっ!くはははーーー!!狂う"――――!!」
「狂う」と言いながらも、その声は今までに聞いたこともないくらい笑い声。
何とか脇のところで脇の皮膚を「突き」、「引っ掻き」、「弄っている」指を掴もうとするが、うつ伏せになっているので俺の手、腕をうまく掴めない。
・・・というか腕を掴まれても、あっ!そう思っている内に掴まれた。
「ハァハァッ!ハァハァッ!ンンッ!んーーーッ!」
細い腕に掴まれた・・・熱い手のひらから体温が移ってくる。
そのまま、脇から手を引き離そうとするが・・・。
(けど、こうすると・・・)
脇の肉を軽く掴み揉むように震わせると。
「ンッ!ンッんーーーっ!!!ギャハハハーーーーッ!!あひゃ!くははーーーッ!指動かさないでーーーーきゃはひゃひゃははははーーーーーっ!!!も、動かすなーーーっ!ギャヒャヒャヒャハハハハーーーーーッ!!!!」
せっかく掴んだ手をあっさり離してベッドのマットを叩く、叩く。
(これ以上は・・・ダメだ)
心の中のドス黒い感情がどんどん心を包みこんで大きくなっていくのを何とか止めようと理性を総動員する。
もっとしたい。
もっと動かしたい。
もっと声が聞きたい。
もっと動く様がみたい。
もっと狂わせたい。
もっと痴態がみたい。
そんな黒く、身勝手な感情を止めようと躍起になる。
(でも・・・・・・後、もう少しだけ・・・もう少し・・・もう少し)
これで終わり、そう思いながらも・・・。
「ハァハァっ、はひゃあっハァハァッ!も、もう、ダメェッハァハァっハァ!」
脇の指を止め、ゆっくり離す。
「んっ!ふひゃう!・・・ハァハァ!」
そのまま・・・。
「ンンンンッーーーーーッ!!!・・・・・・ッッッ!!やっ!ダ、ダメェーーーーッ!!クヒャヒャビャハハハーーーーッ!!だめだめっだめーーーーーっ!!ンンンーーーッ!!!・・・ンっ!・・・・・・ッ!それだけはっ!ぎゃはははははーーーーはひっ!!ブヒャハハハーーーーーッ!!んっ!ンギギギーーーーッ!!あはははははーーーーーーーッ!!!」
そのまま、由美の右腕を持ち上げ、舌を這わせた。
(・・・ちょっとしょっぱいな、やっぱり汗かいてるもんな)
柔らかい感触。
軽く舌を這わせ、上から下に舐め、弾く。
舌が動くたびに、その刺激に力が入るだろう、脇の凹みが逃げるようにさらに深くなる。
「しょっぱい」
その一言を発したとたん、彼女の身体が大きく跳ねた。
「ッ!!!!・・・は、恥ずかしいっ!!お、お願い!舐めるのはっ!・・・んんっ!くひゃひゃひゃーーーっ!!舐めるのダメェーーー!!はぐぅうーーーッ!!ウグッハッハハハーーーーっ!恥ずかしっ!ンンンッーーーッ!!・・・んんっ!・・・・・・あひゃ!アヒャヒャハヒャハハハハーーーーーーーッ!!ギャハハハーーーッ!!!!いやあぁあーーッ!あひゃひゃはははーーーーーッ!!!」
(綺麗に処理されてるな~。ツルツルで気持ちいいし・・・ちょっとクセになりそう)
正直もっと変な味・・・苦い系な感じ、匂いがすると思ったけど、しょっぱいだけで別に特に味も変な匂いもしない。
(もっと奥まで・・・)
一旦、舌を離しそのままカプっと大きく口を開けて脇ごと齧り付く。
そして、吸い付き脇の肉をハムハムと甘噛みする。
「ぶひゃひゃひゃひゃひゃひゃはやっはははははははーーーーーーっ!!!アヒャヒャっ!!!!・・・わきっ!わぎっもうっ!!!ギャハハハハーーーっ!!狂う、おかしくっ!おがじぐなっギャハヒャヒャーーっ!!るーーーっ!!ふひゃはははーーーっ!!!ひゃああああはっははーーーっ!!!くすぐっだいーーーーーっ!!ブギャハハハーーーーーッ!!・・・ひゃひゃひゃっ!クハハハハーーーッ!!」
ちゅーちゅーと音するくらい吸い、口の中の脇の肉をリズミカルに嘗め回す。
ちゅーっ!ずずーーっ!と下品な音が室内に鳴り響く。
「は、恥ずかしいっ!くひゃはははーーーっ!!んんんっ!・・・んぎぃーーっ!!・・・ダメッ!フヒャヒャヒャハハハハーーーっ!!!ぎゃはははーーーっ!・・・許してっ!ゆるじでーーーっ!アヒャハハヒャハハーーーーーーーーッ!!!ははーーーっ!!た、たべじゃだめぇーーーっ!!」
脇の肉を舌で堪能しながら、彼女の表情をチラチラと観察する。
今にも泣きそうでもあり、でも目はトロンとしてしていて・・・こちらの
加虐性をくすぐる。
小動物のような瞳、そして華奢な体型。
もっとしてそうでもあり、もう限界で拒んでいるような雰囲気。
(自分にこんな一面があるなんて・・・)
正直、由美に対してこんな感情があるとは思わなかった。
「ブヒャヒャヒャヒャハハハハハーーーーッ!!ひっひぃーーっ!ハムハムしないで、手っ手も!!すとっッぶひゃはははっひゃはははひゃはははーーーッ!!も、いじめないッキャハハヒャヒャハハハーーーーッ!!」
開いている両手で彼女の無防備な腰をツンツンとランダムに突っつく。
脇をしゃぶっているので、うまく見えないが大体の検討で彼女の腰の辺りを5本の指を立てて、突く。
普段では考えられないくらい大声をあげる由美。そのものすごい声に近所の苦情が心配なくらいだ。
(すごい声、反応だな・・・でも・・・・・・)
俺は普段では考えられないくらいに大胆にそして、自分勝手に振舞ってしまう。
もう、本来の目的である目的・・・本来の目的である、「由美の考えすぎな思考」、「消極的な行動」を変えるという目的が、もうどうでもよかった。
ただ、彼女の大きな反応が見たい、彼女の大げさな動きが見たい・・・もうそれだけなっていた。
「い、いぎが出来なっ!!ブヒャヒャヒャーーーーッあはっ!きゃはははあははひゃひゃはひゃははひゃーーーーーーッ!!!変になる"―――ッ!!あだま変にッッ!!ヒャアヒャハハハヒャハハーーーーッ!!・・・ふぐぅうーーッ!」
由美は大声を撒き散らしながら、細身の身体をバウンドさせ、俺の指の動きに応える。
「も、もう無理っ!ぎゃヒャひゃはひゃははははーーーーーーっ!!!もッ!!・・・痛いっ」
「ッ!!!」
痛い・・・その言葉に俺の頭の中に漂っていた靄が一気に晴れ、正常な思考に戻った。
「あっ!・・・だ、大丈夫!?」
慌てて手を止め、うつ伏せになっている由美から身体を退ける。
「ふひゃうっ・・・ハァハァッ!ハァハァ!・・・・・・くひゃは・・・はひゃっ・・・はぁはぁっ!はぁはひゃっ」
身体の末端を微かに痙攣させながら、グッタリしている由美。
「あ、あの、そのっ・・・ごめん!」
ベッドから退いて、土下座。
「あひゃっ!・・・はぁはぁ・・・ハァハァっ!・・・だ、だいひょうぶっ。ち、ちょっと、・・・はぁはぁっ、疲れただひぇ、はぁはぁ」
由美は首だけをこちらに向け、何とか応えてくれた。
「でもっ!!・・・あっ、それより痛いとこどこ!?見てみないとっ!」
「ハァハァっ!・・・んっ・・・だ、だいひょうぶ。あれは止めてもらうための嘘だからっ・・・はぁはぁっ、どこも痛くないよ」
彼女は優しくそう言うと、俺に向かって微かに微笑んだ・・・母が俺に向けてくれいたような全てを許してくているような深い笑み。
その笑みに、心の奥がズキっと痛んだ。
「そうか・・・無理してるなら言ってくれよ。ちゃんと痛いところ見てみるから」
土下座を止め、彼女の顔を覗きこむ。
「はぁはぁ・・・大丈夫だよ。もう心配性だなぁ、健一は・・・ハハっ・・・はひゃ」
ヘニャっと笑い、片手で俺の頬を触る。
「・・・ごめんな」
彼女の目を見ながら心を込めてそう言った。
「へへっ、今日はいろいろビックリする日だなぁ」
由美は俺の頬を撫でながら、微笑む。
「ごめん」
「・・・ハハッもういいよ。はぁはぁ、だって嫌なことされたって思ってないし、いろいろ発見もあって楽しかった・・・はひゃ」
呼吸がしだいに整ってきて、彼女の雰囲気も余裕が生まれてきている気がする。
「そっか・・・でも、今日は強引過ぎた。もうしない」
「そんなことないよ。このくらい強引じゃないと特訓にならなかったと思うし」
特訓という言葉に再び胸がズキッと痛む。
「でも・・・俺は」
「わかってる。健一は優しいもんね」
俺の言葉を遮り、微笑む。その笑みが何も気にしなくていい、と語っていた。
「ごめ・・・いや何でもない」
その笑みに、その気遣いに、再び謝ろうとしてしまい言葉を飲み込んだ。
「へへっ、かわいいなぁ。もう~」
人形のような可憐な顔ではにかむ。
(うっ、かわいい!)
頬が赤く、少し上気した顔。まるで運動した後のような感じ・・・、そんな顔ではにかまれるとっ!
「ふ、普段と逆だな~」
何故か恥ずかしくなって一言そう言うのがそうやっと・・・・・・彼女から視線を外す。
「んっ?あははっそうだね~」
屈託笑う由美。その表裏のない笑顔にますます恥ずかしくなる。
(な、何で俺のほうが恥ずかしくなるんだよ!てか、こいつ可愛いすぎる!!)
たくさん運動???したからだろう。普段より開放的になっているみたいで、
満面の笑みを見せてくれる。
(いつもはこんなに笑わないのに・・・うぅ、このギャップがすごい、何かこう、・・・その・・・萌える!!!)
普段は微笑はしてくれるが、ここまで・・・お菓子を上げた時の子供のような満面の笑みはかなり珍しい、そして激しく可愛い!!
「・・・・・・何で顔を背けるの?」
「それは目からビームが出せるようになったからだよ」
「・・・・・・どうして、ほっぺが赤いの?」
「それはビームの充電をしているからだよ」
「・・・・・・照れてる?」
「それは禁則事項なんだよ」
おちょけて言うと。
「へへっ~照れてる、可愛い~!健一も普段こんな気持ちなのかな~?ふふっ」
そう言うと上半身を起こし、そのまま首に手を絡ませて頬を顔に擦り付けてくる由美。
「くぅう~!」
いつもは責めてる分、受けに回ると、どうすればいいのかわからんのと気恥ずかしさで・・・くぅうーーーっ!って感じになってしまった。
うまく言えないが、くぅうーーって感じ。
悔しさと恥ずかしさと嬉しさがごちゃ混ぜになり、魔女の作るスープのようにごちゃごちゃとして混沌とした感情。
しかし、別に嫌でもない・・・むしろちょっと心地いい。
でも、手玉に取られてるわけだから・・・悔しくて、「くぅうーー!」て、感じだ(意味分からん)。
「にゅふふ~~、どうだ、どうだ~?恥ずかしいでしょう~?」
彼女はご機嫌な口調で頬を俺の顔にますます擦りつけたり、首に顔を絡ませてくる。
(ま、たまにはこんなのもいいかなぁ。こんな風に俺に甘えてくる由美は初めてみるしな)
いつもは受身な分こういった行動をする由美は新鮮だ。
俺が行動して、彼女がリアクションする・・・これが我々の通常の日常。
彼女から行動を移すことは滅多にない・・・スキンシップもいつも俺から・・・。
だから、こうやって甘えられると求められているようで嬉しい。
「にゃはは~~ンっ?どうしたの~~?」
俺が黙っているのを変に思ったのだろう。
顔をスリスリするのを止め、こちらを見つめる由美。
瞳と瞳が見つめあう。
「・・・いや、ただこうやって由美に甘えられると嬉しいなぁって思ってさ」
素直にそう思ったことを口にした。
「ッ!そ、そう?」
由美は目を大きくしながら少し顔を赤らめた。
「おぅ。こんなに自分から甘えてきてくれるなんて初めてじゃん?俺を求めてくれてるみたいで嬉しい」
「・・・そっか・・・・・・そうだよね。甘えられると嬉しいよね」
顔と顔が近づきコツンと、額と額を合わせる。
どちらも他人には見せられないような腑抜けた、無防備な笑み。
他人行儀な笑み、会社の知り合いに見せる笑み、同僚に見せる笑み・・・そういった「仮面」をつけた笑みとは根本的に違う笑み。
「へへっ~」
「へへっ」
どちらも子供に戻った時のような顔ではにかみ、微笑む。
「積極的な由美も、消極的な由美も・・・どんな由美も大好きだよ」
晴れ晴れとした顔でそう言えた。
「ありがとう・・・私もどんな健一も大好き。エッチな健一も・・・照れてる健一も・・・くすぐってくるちょっと意地悪な健一も全部・・・・・全部!」
そう言い、少し涙目で俺の腰にしがみつく。
すぐ下にある彼女の頭を撫でながら・・・。
「これからもよろしくな」
「うん・・・うん!!」
?の視点
スレタイ
「知り合いが消極的な奴っている?」
消極的で無口な奴は照れ屋か考えすぎか、それかただバカなだけか・・・大体どれかだから、考える隙をこっちが与えないようにするか向こうに考えさせないようにするかしたらいいんだよ。
具体的にはそこそこしんどいスポーツをするとか酒を飲みまくるとか・・・そういった後は考えるのがしんどくなって、消極的で無口なタイプも心を解放するぞ。
ちなみに俺のオススメはくすぐりだな。
恋人限定だけど、くすぐりまくってみ?あれヤラれてるほう結構しんどいからさ体力かなり使うからオススメ。
もちろん、マジで嫌がられたら止めろよ。
くすぐりはかなり相性があるからなぁ、難しいけど(ちはみに俺の場合3人中2人はダメだった)・・・でも、相性があえば消極的な奴との突破口になってマジオヌヌメ。
ま、消極的で無口な恋人がいたら試してみろやww
終わり
おまけ
登場人物
ヒロイン 由美
24歳
78-59-80
小柄。口べた、無口。行動力少ない。情にあつい。優しい。ある意味行動力あり。素直。口下手なのは相手を傷つけるかもしれない、相手を不快にするかもしれないという気持ちがあるため。後、行動力が少ないため、自己肯定力が低い。また、エネルギッシュな人、行動力のある人を尊敬している。
主人公 健一
24歳
普通。行動力あり。ヒロイン大好き。相手を思いやる気持ちもある。しかし、彼女が傷つきやすいのがわかっているため、大胆な行動には出ない。
真理(店員さん)
27歳
90-65-86
168センチ
長身。常に余裕のある雰囲気を作っているが結構ヘたれ。しかし、立ち直りは異常に早い。
言葉遣いは敬語が基本。
相手との距離を大切にし、相手の目や態度をキチンと見ておりその上で行動する。
愛(店員)
20歳
ヒロインと同じくらい小柄。147センチ。
毒舌家。しかし、本当に相手を傷つける言葉は使わない。
友達は少なく、相手に近づくのをかなり怖がる小動物系。
真理のことが好きで店に面接に来る。
- 2014/11/20(木) 18:20:05|
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